1.北の国から-遥かなる大地より~螢のテーマ-
2.道化師のソネット
作詞:さだまさし
作曲:さだまさし
笑ってよ 君のために 笑ってよ 僕のために
僕達は小さな舟に 哀しみという荷物を積んで
時の流れを下ってゆく舟人たちのようだね
君のその小さな手には 持ちきれない程の哀しみを
せめて笑顔が救うのなら 僕は道化師になれるよ
笑ってよ 君のために 笑ってよ 僕のために
きっと誰もが 同じ河のほとりを歩いている
僕らは別々の山を それぞれの高さ目指して
息もつかずに登ってゆく 山びと達のようだね
君のその小さな腕に 支えきれない程の哀しみを
せめて笑顔が救うのなら 僕は道化師になろう
笑ってよ 君のために 笑ってよ 僕のために
いつか真実に 笑いながら話せる日がくるから
笑ってよ 君のために 笑ってよ 僕のために
笑ってよ 君のために 笑ってよ 僕のために
3.雨やどり
作詞:さだまさし
作曲:さだまさし
それはまだ私が神様を信じなかった頃
9月のとある木曜日に雨が降りまして
こんな日に素敵な彼が現れないかと
思ったところへあなたが雨やどり
すいませんねと笑うあなたの笑顔
とても凛凛しくて
前歯から右に四本目に虫歯がありまして
しかたがないので買ったばかりの
スヌーピーのハンカチ
貸してあげたけど 傘の方が良かったかしら
でも爽やかさがとても素敵だったので
そこは苦しい時だけの神だのみ
もしも もしも 出来ることでしたれば
あの人にも一度逢わせて ちょうだいませませ
ところが実に偶然というのは
恐ろしいもので 今年の初詣でに
私の晴着の裾踏んづけて
あ こりゃまたすいませんねと笑う
口元から虫歯がキラリン
夢かと思って ほっぺつねったら 痛かった
そんな馬鹿げた話は
今まで聞いたことがないと
ママも兄貴も死ぬ程に笑いころげる 奴らでして
それでも私が突然 口紅などつけたものだから
おまえ大丈夫かと おでこに手をあてた
本当ならつれて来てみろという
リクエストにお応えして
5月のとある水曜日に彼を呼びまして
自信たっぷりに紹介したらば
彼の靴下に 穴がポカリ
あわてて おさえたけど しっかり見られた
でも爽やかさが とても素敵だわとうけたので
彼が気をよくして急に
もしも もしも 出来ることでしたれば
この人をお嫁さんにちょうだいませませ
その後 私 気を失ってたから
よくわからないけど
目が覚めたらそういう話が すっかり出来あがっていて
おめでとうって言われて も一度気を失って
気がついたら あなたの腕に 雨やどり
4.案山子
作詞:さだまさし
作曲:さだまさし
元気でいるか 街には慣れたか
友達出来たか 寂しかないか お金はあるか
今度いつ帰る
城跡から見下せば 蒼く細い河
橋のたもとに 造り酒屋のレンガ煙突
この町を綿菓子に染め抜いた雪が消えれば
お前がここを出てから初めての春
手紙が無理なら 電話でもいい
「金頼む」の一言でもいい
お前の笑顔を待ちわびる
おふくろに聴かせてやってくれ
元気でいるか 街には慣れたか
友達出来たか 寂しかないか お金はあるか
今度いつ帰る
山の麓煙吐いて列車が走る
凩が雑木林を転げ落ちて来る
銀色の毛布つけた田圃にぽつり
置き去られて雪をかぶった 案山子がひとり
お前も都会の雪景色の中で
丁度 あの案山子の様に
寂しい思いしてはいないか
体をこわしてはいないか
手紙が無理なら 電話でもいい
「金頼む」の一言でもいい
お前の笑顔を待ちわびる
おふくろに聴かせてやってくれ
元気でいるか 街には慣れたか
友達出来たか 寂しかないか お金はあるか
今度いつ帰る
寂しかないか お金はあるか
今度いつ帰る
5.関白宣言
作詞:さだまさし
作曲:さだまさし
お前を嫁にもらう前に 言っておきたい事がある
かなりきびしい話もするが 俺の本音を聴いておけ
俺より先に寝てはいけない
俺より後に起きてもいけない
めしは上手く作れ いつもきれいでいろ
出来る範囲で構わないから
忘れてくれるな仕事も出来ない男に
家庭を守れるはずなどないってこと
お前にはお前にしか できないこともあるから
それ以外は口出しせず黙って俺についてこい
お前の親と俺の親と どちらも同じだ大切にしろ
姑小姑かしこくこなせ たやすいはずだ愛すればいい
人の陰口言うな聞くな
それからつまらぬシットはするな
俺は浮気はしない たぶんしないと思う
しないんじゃないかな ま、ちょっと覚悟はしておけ
幸福は二人で 育てるもので
どちらかが苦労して つくろうものではないはず
お前は俺の処へ 家を捨てて来るのだから
帰る場所は無いと思え これから俺がお前の家
子供が育って 年をとったら
俺より先に死んではいけない
例えばわずか一日でもいい
俺より早く逝ってはいけない
何もいらない俺の手を握り
涙のしずくふたつ以上こぼせ
お前のお陰でいい人生だったと
俺が言うから必ず言うから
忘れてくれるな 俺の愛する女は
愛する女は 生涯お前ひとり
忘れてくれるな 俺の愛する女は
愛する女は 生涯お前ただ一人
6.関白失脚
作詞:さだまさし
作曲:さだまさし
お前を嫁に もらったけれど 言うに言えないことだらけ
かなり淋しい話になるが 俺の本音も聞いとくれ
俺より先に寝てもいいから 夕飯ぐらい残しておいて
いつもポチと二人 昨日のカレー チンして食べる
それじゃあんまり わびしいのよ
忘れていいけど 仕事も出来ない俺だが
精一杯がんばってんだよ 俺なりに それなりに
La la la…
父さんみたいに なっちゃ駄目よと
お前こっそり子供に言うが 知ってるぞ
飯を食らっちゃ寝 起きてワイドショー見ちゃ寝
井戸端会議しちゃ寝 よく夜寝られるなぁ
ムダなダイエット ムダな体重計
本気でヤセたきゃ あんなに食べなきゃいいのに
それからあれだぞ テレフォンショッピング 買い物ぐらい 体動かせ
それぞれご不満もおありのことと思うが
それでも家族になれて よかったと俺思ってるんだ
そして今日も君たちの笑顔 守る為に 仕事という名の 戦場へ往く
右に定期券 左に生ゴミ 人は私を哀れだと言うけれど
俺には俺の幸せがある
君たちの幸せの為なら 死んでもいいと誓ったんだ
それだけは疑ってくれるな 心は本当なんだよ
世の中思いどおりに 生きられないけれど
下手くそでも一所懸命 俺は生きている
俺が死んだあと いつの日か 何かちょっと困った時にでも
そっと思い出してくれたなら きっと俺はとても幸せだよ
がんばれ がんばれ がんばれ みんな
がんばれ がんばれ がんばれ みんな
がんばれ
がんばれ がんばれ がんばれ みんな
がんばれ がんばれ がんばれ みんな
がんばれ がんばれ がんばれ みんな
がんばれ がんばれ がんばれ みんな
がんばれ
がんばれ がんばれ みんな
がんばれ
7.秋桜
作詞:さだまさし
作曲:さだまさし
淡紅の秋桜が秋の日の
何気ない陽溜まりに揺れている
此頃 涙脆くなった母が
庭先でひとつ咳をする
縁側でアルバムを開いては
私の幼い日の思い出を
何度も同じ話くりかえす
ひとりごとみたいに 小さな声で
こんな小春日和の穏やかな日は
あなたの優しさが浸みて来る
明日嫁ぐ私に 苦労はしても
笑い話に時が変えるよ
心配いらないと 笑った
あれこれと思い出をたどったら
いつの日もひとりではなかったと
今更乍ら わがままな私に
唇かんでいます
明日への荷造りに手を借りて
しばらくは楽し気にいたけれど
突然涙こぼし 元気でと
何度も 何度も くりかえす母
ありがとうの言葉をかみしめながら
生きてみます 私なりに
こんな小春日和の穏やかな日は
もう少しあなたの
子供でいさせてください
8.精霊流し
作詞:さだまさし
作曲:さだまさし
去年のあなたの想い出が
テープレコーダーから こぼれています
あなたのためにお友達も
集まってくれました
二人でこさえたおそろいの
浴衣も今夜は一人で着ます
線香花火が見えますか 空の上から
約束通りに あなたの愛した
レコードも一緒に流しましょう
そしてあなたの 舟のあとを
ついてゆきましょう
私の小さな弟が
何にも知らずに はしゃぎまわって
精霊流しが華やかに始まるのです
あの頃あなたがつま弾いた
ギターを私が奏(ひ)いてみました
いつの間にさびついた糸で
くすり指を切りました
あなたの愛した母さんの
今夜の着物は浅黄色
わずかの間に年老いて 寂しそうです
約束通りに あなたの嫌いな
涙は見せずに 過ごしましょう
そして黙って 舟のあとを
ついてゆきましょう
人ごみの中を縫う様に
静かに時間が通り過ぎます
あなたと私の人生をかばうみたいに
9.無縁坂
作詞:さだまさし
作曲:さだまさし
母がまだ若い頃 僕の手をひいて
この坂を登る度 いつもため息をついた
ため息つけば それで済む
後だけは見ちゃだめと
笑ってた白い手は とてもやわらかだった
運がいいとか 悪いとか
人は時々 口にするけど
そうゆうことって確かにあると
あなたをみててそう思う
忍ぶ 不忍 無縁坂 かみしめる様な
ささやかな 僕の母の人生
いつかしら僕よりも 母は小さくなった
知らぬまに白い手は とても小さくなった
母はすべてを暦に刻んで
流して来たんだろう
悲しさや苦しさは きっとあったはずなのに
運がいいとか 悪いとか
人は時々 口にするけど
めぐる暦は季節の中で
漂い乍ら過ぎてゆく
忍ぶ 不忍 無縁坂 かみしめる様な
ささやかな 僕の母の人生
10.親父の一番長い日
作詞:さだまさし
作曲:さだまさし
おばあちゃんは夕餉の片付けを終えた時
弟は2階のゆりかごの中で
僕と親父は街頭テレビのカラテ・チョップが
白熱した頃に 妹の誕生を知った
それから親父は 占いの本と辞書と
首っぴきで
実に一週間もかけて
娘のために つまりはきわめて何事もない
ありふれた名前を見つけ出した
お七夜 宮参り 夫婦は自画自賛
可愛いい娘だと はしゃぎ廻るけれど
僕にはひいき目に見ても しわくちゃの失敗作品
やがて彼女を訪れる 不幸に胸を痛めた mm…
兄貴として mm…
妹の生まれた頃の我が家は
お世辞にも 豊かな状態でなかったが
暗闇の中で 何かをきっかけに
灯りが見えることがある
そんな出来事だったろう
親思う心に勝る 親心とやら
そんな訳で妹は ほんのかけらも
みじめな思いをせずに育てられた
ただ顔が親父に似たことを除けば
七五三 新入学 夫婦は狂喜乱舞
赤いランドセル 背負ってか 背負われてか
学校への坂道を 足元ふらふら下りてゆく
一枚のスナップが 今も胸に残ってる mm…
兄貴として mm…
我が家の血筋か 妹も足だけは速くて
学級対抗のリレーの花形で
もっとも親父の応援のすごさに
相手が気おくれをして
随分助けられてはいたが
これも我が家の血筋か かなりの演技派で
学芸会でもちゃんと 役をもらった
親父の喜びは 言うまでもない
たとえその役が 一寸法師の 赤鬼の役であったにしても
妹 才気煥発 夫婦は無我夢中
反抗期を過ぎて お赤飯を炊いて
中学に入れば 多少 女らしくなるかも知れぬと
家族の淡い期待 あっさり裏切られてがっかり mm…
兄貴として mm…
妹の初恋は高校二年の秋
相手のバレー部のキャプテンは よくあるケース
結局言い出せる 筈もなく
枯葉の如く散った これもまたよくあるパターン
彼氏のひとりも いないとは情けないと
親父はいつも 笑い飛ばしては いたが
時折かかる電話を 一番気にしていたのは
当の親父自身だったろう
危険な年頃と 夫婦は疑心暗鬼
些細な妹の言葉に揺れていた
今は我が家の 一番幸せなひととき も少し
このままいさせてと 祈っていたのでしょう mm…
親子として mm…
或る日ひとりの若者が 我が家に来て
“お嬢さんを僕に下さい”と言った
親父は言葉を失い 頬染めうつむいた
いつの間にきれいになった娘を見つめた
いくつもの思い出が 親父の中をよぎり
だからついあんな大声を出させた
初めて見る親父の狼狽 妹の大粒の涙
家中の時が止まった
とりなすお袋に とりつく島も与えず
声を震わせて 親父はかぶりを振った
けれど妹の真実を見た時
目を閉じ深く息をして
小さな声で…
“わかった娘は くれてやる
その変わり一度でいい
うばって行く君を君を殴らせろ”と
言った mm…
親父として mm…
妹の選んだ男に間違いはないと
信じていたのも やはり親父だった
花嫁の父は静かに 娘の手をとり
祭壇の前にゆるやかに立った
ウェディング・ベルが 避暑地の教会に
鳴り渡る時 僕は親父を見ていた
まぎれもない 父親の涙の行方を
僕は一生忘れないだろう
思い出かかえて お袋が続く
涙でかすんだ 目の中に僕は
今までで 一番きれいな妹と
一番立派な 親父の姿を 刻み込もうとしていた mm…
兄貴として mm…
息子として
11.防人の詩
作詞:さだまさし
作曲:さだまさし
おしえてください
この世に生きとし生けるものの
すべての生命に限りがあるのならば
海は死にますか 山は死にますか
風はどうですか 空もそうですか
おしえてください
私は時折苦しみについて考えます
誰もが等しく抱いた悲しみについて
生きる苦しみと 老いてゆく悲しみと
病いの苦しみと 死にゆく悲しみと
現在の自分と
答えてください
この世のありとあらゆるものの
すべての生命に約束があるのなら
春は死にますか 秋は死にますか
夏が去る様に 冬が来る様に
みんな逝くのですか
わずかな生命のきらめきを信じていいですか
言葉で見えない望みといったものを
去る人があれば 来る人もあって
欠けてゆく月も やがて満ちて来る
なりわいの中で
おしえてください
この世に生きとし生けるものの
すべての生命に限りがあるのならば
海は死にますか 山は死にますか
春は死にますか 秋は死にますか
愛は死にますか 心は死にますか
私の大切な故郷もみんな
逝ってしまいますか
海は死にますか 山は死にますか
春は死にますか 秋は死にますか
愛は死にますか 心は死にますか
私の大切な故郷もみんな
逝ってしまいますか
12.風に立つライオン
作詞:さだまさし
作曲:さだまさし
突然の手紙には驚いたけど嬉しかった
何より君が僕を怨んでいなかったということが
これから此処で過ごす僕の毎日の大切な
よりどころになります ありがとう ありがとう
ナイロビで迎える三度目の四月が来て今更
千鳥ヶ淵で昔君と見た夜桜が恋しくて
故郷ではなく東京の桜が恋しいということが
自分でもおかしい位です おかしい位です
三年の間あちらこちらを廻り
その感動を君と分けたいと思ったことが沢山ありました
ビクトリア湖の朝焼け 100万羽のフラミンゴが
一斉に翔び発つ時 暗くなる空や
キリマンジャロの白い雪 草原の象のシルエット
何より僕の患者たちの 瞳の美しさ
この偉大な自然の中で病いと向かい合えば
神様について ヒトについて 考えるものですね
やはり僕たちの国は残念だけれど
何か大切な処で道を間違えたようですね
去年のクリスマスは国境近くの村で過ごしました
こんな処にもサンタクロースはやって来ます 去年は僕でした
闇の中ではじける彼等の祈りと激しいリズム
南十字星 満天の星 そして天の川
診療所に集まる人々は病気だけれど
少なくとも心は僕より健康なのですよ
僕はやはり来てよかったと思っています
辛くないと言えば嘘になるけど しあわせです
あなたや日本を捨てた訳ではなく
僕は「現在」を生きることに思い上がりたくないのです
空を切り裂いて落下する滝のように
僕はよどみない生命を生きたい
キリマンジャロの白い雪 それを支える紺碧の空
僕は風に向かって立つライオンでありたい
くれぐれも皆さんによろしく伝えて下さい
最后になりましたが あなたの幸福を
心から遠くから いつも祈っています
おめでとう さようなら
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